リーダーは間違っている

先日、とある方々にお会いした際に、「smilecoachさんのノウハウを教えて下さい!」と懇願され、成功者であるわけでもないと思っていますが、その方々の知りたい事を質問していただければ、自分なりに答えますとお伝えしてお話ししました。けれども、何度も「私のやり方が全てではなく、一つです。」という事は念押ししました。メモを凄くしてくださっていたので、気になってしまったのです。

私のノウハウという物があるわけではなく、本当に質問されていることをお応えしたのですが、少し話していると「●●とかじゃないんですね」と聞かれました。「それもいいですよね。」と言うと、「拘りはないんですか?」と更に聞かれました。「はい、私も間違いだらけだと思いますので、その都度変えてみたり、真似してみたり、柔軟に変化していると思います。」と話した時に、以前お会いしたリーダーの事を思い出しました。

それは、もう8年程前になりますが、とある大手企業様で研修をさせていただく機会をいただきまして、伺いました。
その時に、冒頭の挨拶で技術部を統括する常務が挨拶をされました。常務の中ではダントツに若い方で、技術部の方々からは一目置かれる方でした。
その方が前に立たれただけで、皆さんの背筋が伸び、日頃お会い出来る方じゃないようで、緊張感が研修会場全体に感じられました。

張り詰めた空気の中、挨拶が始まりました。
「皆さん、私も一昨年までは皆さんと同じ側だったのです。立場が変わっただけで、そんなに緊張しないでください。私は、皆さんの声を代表する人間なので、皆さんの声、一つ一つを取り上げていきたいんです。
私は、2年前、幹部へと抜擢された時に「私に何ができるのか。私がやっていくことは何か。」を考え、ポリシーを持ってやっています。けれども、現場から離れてしまうと、技術の方々の代表であると思っていても、思い違いもあれば、こうした方が皆のためになるだろうと思うことが間違っている事もある。いや、8割以上は間違っている。(笑)
だから、ここに居るみんなが、声を届けてくれなかったら、私は間違いにも気付かないで進んでしまう可能性がある。間違いは間違いだと言えるのは、第一線で働くあなた達なんです。
私は、そういう柔軟性だけは持っているつもりです。
みなさんも、技術の開発には柔軟性が必要です。皆さんの場合は、私程の間違いはないでしょう。けれども、どこか違うなと思った時には、上司に確認するなり、仲間に話すなり、間違っているかもなと少しでも早く声をあげてみて欲しい。
それが、結果として間違った方向へ進んでしまう時間を短くできる。これは大きなコスト削減にもなります。
私は2年前に、現場の声を届ける役割も果たすと決めて、矢面に立つ覚悟もできています。多くのリーダーが間違っていると思って、自分達の声をしっかり届けてください。リーダーの声を鵜呑みにするだけではなく、自分達の意思をしっかり持って、日々の仕事に取り組んでください。時に、自分の仕事が間違ってないだろうかと振り返って下さい。
私は、皆さんの「間違っているんじゃないだろうか」という声を聴ける事を楽しみにしています。そして、「間違ってない」と思った事に対しての成果をこれからも楽しみにしています。」

話が終わった後、常務への質問時間が取られたのですが、皆さんからは熱のこもった質問や意見が届けられ、私達の研修は要らないのではないかと思うほどの盛り上がりを見せました。

今でも、その常務の挨拶は耳に残っています。この前後には技術的な話も少しありましたが、その辺りは難しくて判りませんでしたが、上記の挨拶の部分には、聴いている皆さんの表情が変わっていく様子も見られ、鼓舞するというのは、こういう事なのかなと感じさせられたのでした。

「リーダーは8割間違っている」という言葉は、技術部の皆さんの「私達の思いはここです」という自主性を引き出していくように思いました。
本当に間違っているのかは判りません。けれど、答えは一つではないけれども、上層部として決断した一つの事柄が違う場合だってあるものなと、その時すごく納得をさせられました。

それ以来、私自身も「研修する立場が間違っていないわけではない」「取りまとめる私が正しいばかりではない」と言う柔軟性をより高める事ができたように思います。

リーダーは「間違っているかも」という観点を持っている事も大切でしょうし、部下もまた「リーダーの言っている事が正しいのだろうか。自分であればこう」という自分の意思を持つことも大切なのではないでしょうか。

これもまた、その挨拶に感化された私の偏った見方かもしれませんが、違っていたらまた修正すればいい。それが柔軟性なんではないかと今は考えています。何か決断をしなければならない場面はリーダーには必ずありますし、その決断を貫いて行くことも大切でしょうが、時に「間違っているかも」と振り返る時間は必要なのではないでしょうか。
あなたはどう思いますか。

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