マルチタスクなメンバーを作りたいなら

先日の事、企業のリーダーの研修で「マルチタスクの部下に育てたい。何でもできればどこでも使えるし、全ての工程を任せていける。そんな集団になったら、どんな仕事でもチャレンジできるようになる気がする。」とテーマに上がり、その件について議論がされました。
私は中小企業で確かに、マルチタスクを求められ、求めてきた気がします。なので、自分の方法を押し付けてしまわないよう、議論には入り込まず、どんな所に課題を抱えているのかも聞いていました。

そもそも、マルチタスクな人をどうして育てたいかです。
前述のとおり、「自分が挑戦していくためにも、部下に任せていけるように」というのは、凄く素敵だなと思いました。が中には、自分が楽になるという人もいらっしゃいました。正直だなあと思いますが、それが部下に伝わってしまったら、部下は上司をラクにするためにマルチタスクを要求されることになり、部下が本気で育とうとするとは思えません。

自分の中にそんな思いがあるのなら、せめて部下がマルチタスクになると得られるものや、マルチタスクな人のイメージがプラスになるような事を引き出して欲しいものです。

その話し合いの中でも、「私が部下だったら・・・」と部下視点の話も出始め、「マルチタスクなメンバーになるとどんないいコトがあるんだろう?」と言う議論で盛り上がりました。

その後、「こういう話を部下としてみればいいんだな」と一人がおっしゃると、皆さんが頷き、メモをし、ご満悦だったので、「その話し合い、いつされます?」と伺ってみました。

「早速明日にでも」「来週の月曜日の名ばかりのミーティングの時にちょっとやってみようと思う」「明日案内して、来週かな」など出ました。
中には「来月中には・・・」と仰った方もいらっしゃったので、「今月じゃないのはどうしてですか」とお話すると、「今月は忙しいから。来月なら・・」と仰った瞬間、他のリーダーから「それ、やりたくないんだろ。だったらやるとか言うなよ。」と言う突っ込みが。慌てて「まあ、ちょっと不安があったものですから。話してくれるのかなと。でもそう言われると、やりたくないわけじゃないから、明日には案内だして、来月早々に絶対やりますよ。仮にこんなに盛り上がらなかったとしても、一回で成果を出そうとするからですよね。何度でもしますよ。あっ、だったら今月中に一度します。」と。

いづれにしても、なぜそうなるといいのかを、各部署で話してみることになりました。
最後に仰った方が不安に感じたように、一回の話し合いで上手くいくことばかりじゃないかもしれません。けれども、長期的な目で見ていくことも大切でしょうし、自分の都合を押し付けるだけではない「目的」を見つけることが必要なのでしょう。

とは言え、私がそう育てられたのか。というと違います。一つできるようになると、一つハードルをあげるかのように仕事が増え、違う業務が増え、と、出来る事は担保された状態で、もう一歩先の違う事が業務として与えられている状態でした。
というよりも、私の場合は「ここが改善されたら良くなるだろうに」と上司に言うと、「だったらやってみろよ」と言わんばかりに「それいいねえ。やってみてくれない?」と仕事が増える。結局私が、自分で仕事を増やしてしまった事もありました。

が、そんな事は全体が見られるようになってからの話しで、最初は完全に新たな業務が一つ一つ与えられる状態。
「なんで私なんですか?」が開口一番に出てしまいます。ヒマじゃない事は解っているのに、暇に見えるのか?と突っ込みたくなります。しかも業務が減らない中、やったこともない仕事が増える。
上司は「コミュニケーション能力が高いから、営業もやってみようよ。あなたしか居ないんだ。」と営業が追加。「数字の分析が必要だけど、発想していく能力が他の人では心配だから、作業の効率化だと思って、やってくれない?」と上司の分析の業務が私にのしかかる。

本当だったら断りたいのに、「なぜ私なのか」という理由を述べられ、「やってみようよ」と軽く言われると、私が好奇心旺盛な事もあり、断れない。そもそも「仕事は頼まれるうちが花」という父の教えもあり、断らないのもあるのだけれど、好奇心を刺激されて、新しい業務の勉強までしてしまったりして。

とにかくハードルが一つずつ上がっていって、知らないうちに(その会社の望む)マルチタスクになっていました。

きっと企業様ごとに「マルチタスク」の意味も範囲も違うとは思います。けれど、最初にきっかけを作る方法もあれば、徐々に追加していく方法もありますよね。きっと色んな企業で行われている異動も、マンネリを防ぐ、顧客との密過ぎる関係を防ぐ、新しい風を吹き込むなど、色んな目的があるでしょうが、マルチタスクな人を作っていくために行われている場合もあるのではないでしょうか。

そう思えば、マルチタスクな部下を作る事は可能だけれど、どういう方法で行うのか。どう仕組み化していくのか。どれくらいの期間でその状態になる事が理想なのか。など、長期的視野で考えていくことも、そのための行動を起こしていくことも必要なのだなと、体験からも今回の話し合いからも感じました。

忘れがちなのは、そのために自分がどう関わり続けていくのか。一回だけじゃない関わりを想像、実行していくことが必要なのではないでしょうか。

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