見逃しがちなプロセス管理の要素

ありがちなことではありますが、どう伝わっているかが、こんなに影響するんだという事を目の当たりにしました。プロセス管理の見落としがちな要素でもあると私は考えています。

会社での事です。異動によって一つの責務を任された方Aさん。Aさんは、その責務に関してはプロではありません。しかし、期待を受けて大抜擢をされました。Aさんは自分ができることは常に考え、行動にし、形に変えていきました。

しかし、この不景気の時代になった途端に、Aさんに対する風当たりは強くなりました。任せた責務を形にしてないのではないかと。かばう人も一人も居ません。Aさんはやる気を失いながらも、放っておくこともできず、ただ反発心だけが高まっていました。

あるとき、Aさんを含め、会議を行うことになりました。そこでも結果としてAさんは責められていると感じていました。その会議自体は、何とかAさんに任せた部門を立ち直らせることはできないものかと開かれたものでした。しかし、それまでに既に閉じてしまっていたAさんの心は、その会議の思いさえも受け取れず、ただ言い訳めいた事を言うことに集中してしまうのでした。

結果として、同席した「何とかしたい」と思ってくれているメンバーまでもが、不快感を持ち始めるという悪循環が起こり始めてしまいました。

その様子を見て、経営者がストップをかけました。会議は別日に行い、その人の言葉をまず聴いてあげようという事になったのでした。そこで白羽の矢が当たったのが、私だったのです。私は聞き役でした。しかし、誤解されているであろうと明らかに感じられる部分は後から事実を伝えるようにしながら、とにかく聴きました。

Aさんの辛かった思い。頑張ってきた事。形にしてきたこと。やりたいのに止められてしまった事。仲間と思っていた人達に対する失望。今まで頑張ってこれた理由。多くのことを伺いながら、本当に大変な思いであることは伝わってきました。とは言え、共感しすぎても前に進む糧にはならないので、今後への希望や、期待についても話をしてみました。

きっとAさんにとっては、内部を知らない私に聴かれたところで何が変わるわけでもないでしょう。しかし、心の内を口にできた事で、自分で整理できる部分はあるのかもしれません。

Aさんが誤解していたことは、結局はコミュニケーションの量が不足していることによって巻き起こっていました。誤解を解く場面もなく、ただ決め付けた状態でお互いがどんどん距離をとっていく状態に陥っていたのです。しかし、その距離が広がっていく原点にあったのは、「一人だ」という孤独感を感じさせてしまったことだったように思います。

きっと色んな人達の間でもこうしたミスコミュニケーションは起こっているのだと思います。しかし、それがいつどこで起こるかは、受け取る側次第です。相手がどんな思いだったのかはその都度確認していかないと見えないものでもあります。Aさんの場合は、唯一コミュニケーションを取っていた人が退職をしてしまった事でした。その後の後任とのコミュニケーションが全くなくなってしまったことで、自分は一人なんだと思ってしまったのでした。

相談したくても相談できる人も居ない。

そう思わせてしまったのでした。後任の人が悪いわけでもありません。後任者なりに精一杯声をかけていたのですから。しかし、仕事の話だけなのです。心の内を話すには、まだ信頼関係がない。居なくなった人と比べてしまったために起こったことなので、Aさんの捉え方が、たまたまそうだったという事もあります。良い悪いではなく、それが心の中で起こっていたことだったのです。「自分の気持ちを分かってくれる人が欲しい」というのがAさんの叫びだったのだと思います。

そんな事を話した後に、この会議メンバーの思いを伝えたところ、Aさんの目はうるんでいました。ずっと閉ざしてきた心が徐々に扉を開け始めたのかもしれません。今日はお互いに心の通いあう会議をしているのだろうかと想像しながら、報告を待っています。

確かに仕事でのコミュニケーションは取っている人は居るけれど、心の通い合うコミュニケーションを取っているかというと、私も含め、忙しい仕事の中だったりすると、なかなか出来るものではありません。しかし、相手にどう感じたのかの確認ならとれるのではないでしょうか。思い計るだけでなく、その人の気持ちはその人の中にあるのですから、相手に確認をする。これがプロセス管理の見逃してしまいがちな要素ではないでしょうか。

私も年上の女性部下にこのプロセスを行うことが失礼な気がして、見てみぬフリをしてしまった事で、その人を追い詰めてしまった経験があります。その経験を活かして、その後は意識して、少しでも様子がおかしいなと思うと、「どうかした?」「今、何思ってる?」「何か感じたことある?」「嫌そうだけれど納得できてない部分があれば教えて」などと確認をとるようにしました。

最初は慣れなくて見逃していたこともありましたが、このプロセス管理ができるようになると、仕事の進捗管理もスムースにできるようになっていました。数字を追うだけの管理よりも、人の反応は素直なので、そちらを見逃さない事の方がミスもお互いに減る結果ともなりました。関係も良好になりました。

人のしている仕事だからこそ、プロセス管理は「気持ち」を見落とさないことも大切だと感じました。結果として、早めの対応が日々の信頼関係の積み重ねにも繋がったと私は感じています。

Aさんもこれから、新たな思いで、仲間達と協力しあっていけると信じています。

あなたは、このプロセス見落としていませんか。

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