事務員の誇り

中小企業の事務員というと、実は総務全般を行うことが多く、ある意味、雑務は全方向対応という場合が多いと感じています。
私自身も、部長が事業所内のゴミ捨てなども行なってくださっていたので、ある程度、きれいな部分だけ扱わせていただいた気がしますが、仕事は本当に多岐にわたります。だからこそ、「何している人だろう?」と一言で言われると、「雑務です」となってしまいがち。それ故に、会社では軽視される存在であると思います。
が、私は事務員をしていた事への誇りがあります。

事務員をしてきた事で、本当に多くの事を知ることができましたし、体験もさせていただきました。
「お金を産まない部門だから、昇給は一番後回しです。」と言われ、5年以上昇給がなく、昇給しても微々たるものでした。すごく軽視されていたようにも思えますが、その分、普通だったらできないであろう体験を数多くさせていただきました。

経費節減の経理面からのアプローチ、採用、人事制度作成、在庫管理とその仕組み化、社内LANの構築、相見積もりのとり方、人財育成、組織図の構成の仕方、現場の動かし方、理念の活かし方、社員寮管理、マイカーよりかなり大きな車の運転、組織改革、などなど。。。
細かなものを入れたらもっとあります。けれども、会社の仕組みを作ることを上司達と行う事もありましたが、概ね一人で起案して実行まで行わなければならない事が多く、凄く勉強をさせていただきました。
これらの体験がなかったら、きっと独立しても、どこかで立ち止まっていたのではないかと思います。

考えてみると、働いている時になぜそこまで軽視されているのに、頑張れたのか。

正直、頑張っているという感覚は途中からはなかったです。楽しかったんです。
性に合っていたということもあるでしょうが、それ以上に「誇り」があったのだと思います。

運良く、私が入社した頃の事務所(総務部)は、会計事務所を定年前に辞められた凄腕の経理部長と、某大手電気メーカーの事務管理をされていた一廻り上なのに可愛らしい女性事務員と、私の3人でした。
経理部長からは、単に経理だけでなく、会計事務所出身者らしく経営戦略に絡む経理について、事ある毎にご教示をいただきました。その戦略に至った経緯や、なぜその戦略が良いのかなども好奇心から伺うと、内緒だよって言いながら、教えて下さいました。

事務の女性には、事務の心構えや書類の整理の仕方などを改めて見直すきっかけをいただきました。また、いかに現場の人たちと接することが良いのかも教えていただきました。

そんな凄腕の方々に学びながら、自分の好奇心ゆえに、付随して学んだ事もたくさんあったり、任せていただいたり、発案してやらせていただいた事もあって、凄く体験させていただいているうちに、「私達が居なかったら、会社がストップするよね」という話をしたことがあり、それが私の中で、「黒子」という私にとって、凄く嬉しい「ポジション」を与えてくれたように思います。
そして、その「黒子」の存在の大きさを感じると、「誇り」も持てるようになりました。

今だから、人前に立つ仕事もしておりますが、人前に立つことを決断したのも「一人でも多くの人の役に立ちたい」「コーチングを知ってほしい」「裏側で支えられる人で居たい」という思いからでした。
それもきれいごとって言われる事もありましたが、やっぱり「黒子」が私の「誇り」なんです。

先日、ある方に「●●という書類作成が大変だから依頼者を探している」と言われて、伺ったら大した量でもないので、「見直しだけしてくだされば、私、やりましょうか。」と伝えると、嬉しそうに「お願いします」と仰って、依頼してくれました。
何だか「事務員」として、社長の文書を作成するなんて、嬉しいってワクワクしながら行うことができました。相手も喜んでくださって、それが凄く嬉しかったです。

こうして見てくると、「誇り」は体験から生まれ、「やりがい」と関係あるものではないかと考えてしまいます。
「誇り」は磨き続けないといけない気がします。だから、私は体験をできる場を与えて下さる方々に感謝ですし、「黒子」を感じる機会が大好きです。

私の力なんて、正直大したことはないです。事務員を辞めて、かなり経ちます。けれども、今でも自分の経理処理などを自分で行い続けるのも「誇り」があるからなのでしょうね。きっと、時代にあったスタイルに変えていくには、変化が必要だと思うので、新しい知識と体験を重ねて、「黒子力(くろこりょく)」(私の造語)を磨いていきたいと思います。

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