熱い人の落とし穴

熱い人という言葉は色々広義としても捉えられるので、誤解のないように先にお伝えすると、ここでは「拘りのある人」「基準を沢山もった人」という狭義の意味と考えていただければと思います。その拘りって即決をしていくためには大切なものですよね。ところが・・・

チームで、個々の拘りが強すぎると、チームがまとまりにくくなることがあります。特にそれがリーダーだったとすると、部下の意思は通りづらくなることもしばしばです。

ある時、会社への愛情が強く、即断即決の得意な、傍から見ると「熱いリーダー」と出会いました。
「今はこうすべき」「こうしなければならない」などという言葉を良く発していました。部下はそのリーダーに従い、まとまりのあるチームとして成績も上げてきました。

ところが、数ヶ月経ったある日、部下の一人が急に辞めると言い出したのです。理由を聞いても本当の事は聴こえて来ません。そこで私が呼ばれました。「部下の話しを聞いて欲しい。」自分で聞いてみてはいかがですかと申し上げたのですが、本音に聞こえないとの事でした。

ならばと、話だけ聞きに行ったのです。すると、部下曰く、上司の指示に従っているだけで、仕事がつまらない。いつまで経っても成長している気分になれない。モチベーションを保つのに疲れてしまった。と言うのです。
淋しいなと思いましたが、その事を上司に伝えてみようとは思わなかったのかと確認してみると、言える雰囲気がないと言うのです。
どうも、その部下も上司も垣根を通して会話をしているように感じました。部下にお願いをして、上司と3人で話す場を設定させてもらいました。

すると、部下は上司に初めて自分の思いを伝えたのです。上司も部下の本音を聞けるということで真剣に聴いていました。二人は私を介さず、私が居るという事だけを支えに本音をお互いにやんわりと話しました。

上司は部下にも色んな考えがあったのに、潰してしまっていた事。部下の成長を妨げてしまっていたかもしれないことを初めて知りました。
また部下は、上司が本当は本音を聞きたかった事。どうやったら良いチームになるかをいつも模索していたことを初めて知りました。

お互いに話してから、「また一緒にやってみたい」という思いになっていました。熱い人の思いが部下にやっと伝染したようにも感じましたし、部下のクールさを上司が温めてあげられてなかったことに上司も気づいたようでした。

感覚値ではあっても二人がお互いを本当に信頼するきっかけを掴んだ後、どうなったのか。
部下は辞めずにすみました。私が必要なわけではなく、熱が伝わる環境をお互いに作ろうとしてなかっただけなのでした。それを私が中和剤として存在しに行っただけです。

熱い人はもしかしたら、他の熱を持っている人を見過ごしてしまっているのかもしれませんよね。そして、自分だけが熱くなって、周りを一段と冷めさせてしまっていることもあるのかもしれません。

熱さは私は好きですし、私も熱い人間だと自分で感じています。それだけに、自分にも問いかけておきたいことだと思い、了承を得て、ここに事例の一部をのせさせていただきました。内容まではお話できませんでしたが、熱を持っている事を冷ましてしまうのではなく、中和剤的な役割の人を持ってみたり、周りへ与える影響を振り返ってみてもよいのかもしれませんね。
一つの提案としても、自分への戒めとしても、ここに記しておきます。

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