ハラスメントという鎧

ハラスメントという言葉が当たり前になって、「いじめっ子から守る」的な発想に聞こえてきます。
確かに、今まで上の言動に振り回れてしまっていた人達にとっては、凄く救いになると思うのですが、過度にその言葉が氾濫しすぎて、リーダーが注意しづらくなっているという事も事実としてあるように感じています。

私は、「ハラスメント」という言葉が、最近は良くも悪くも「鎧(よろい)」のように見えています。

相手がどう感じるのだろうか。そのことを考えた上で言葉を発するようになることは、凄く重要だなと思います。
その意味で、攻撃する人に、「ハラスメント」という言葉があるだけでも、言葉を考えて発してもらえるのですから、鎧のような役目はしてもらっていますよね。

しかし、リーダーが過度に「ハラスメントと言われても困る」となると、大切な指導が、その場でしづらいという事もある気がします。
特に、危険なことに関してです。

安心安全は、お客様やメンバーの危険から守るためでもあるので、これは本当に優しく伝えるばかりで良いのでしょうか。
時に危機感や危険を知らせる時には、「危ない!」と叫ぶ事だって重要だと思います。

ある時、機械のゴミを電源を切らないで取り除こうとしたメンバーが居ました。
思わず、上司は「危ない!やめろ!」と声を荒らげて止めました。
すると、メンバーはその言葉にビックリして泣き出してしまったのです。
それを遠巻きに見ていたメンバーが、「リーダーが大声出したので、怖くて泣いちゃいました。パワハラじゃないですか。」と言ったのです。

リーダーは、「いや、危ないから、危ないと言ったまでなのに。何かあってからじゃ遅いから。」と。
自分の思いを伝えると、周りのメンバーが「泣かせるほど言う必要があるのですか。言い訳する前に謝ったらどうですか。」と。

このやりとりを聞いて、あなたはどう思いますか。

正直、この一件以来、リーダーは注意をするのもためらうようになりました。
言われた人も、被害者であるかのようにリーダーを恐れるようになりました。が、肝心の電源を止めてゴミを取り除くという作業は続いてしまっています。

リーダーが、もう一度言葉を選びながら言いました。「ゴミを取り除く時は、電源止めてやってね。もしも動いてしまったら、指が切れちゃうから、そうなるのを避けたいんだよ。」と。メンバーは「解りました」と言いながらも、「そんな事あるわけない」「気をつけているし」と思っていたのではないでしょうか。言われた後の数回は気をつけていたようですが、直ぐに元に戻ってしまったそうです。

そんな時に事件が起きました。
リーダーが心配していた事が起こったのです。慣れからなのか、まだ機械が止まってないのに、一瞬でゴミを避けようとして、指を挟んでしまったのです。幸い挟んだ所で、リーダーがたまたま近くにいて、直ぐに止められたそうです。
が、当然の事ながら、労災です。

リーダーは「何でもっと注意しなかったのか。」「徹底しなかったのか。」と叱られるわけです。が、部下は「機械が動いたからです。」と自分の振る舞いのせいだと認めていないようです。結局、ルールとして「止めてからゴミを取り除く」「手ではなく刷毛のようなもので取り除く」など措置は取られましたが、そもそも・・・・。

この事件をたまたま間近で見ていたので、一段と「大声=ハラスメント」とされること自体に違和感がありました。
もとを正せば、リーダーとメンバーとの間の信頼関係が希薄だったのではないか、という事もあるのでしょうが、信頼関係が出来上がってからしか、危険な時に「危険」と声を張り上げてはいけないのでしょうか。

「ハラスメント」って何?
弱者を守るための鎧であっても、危険から身を守るために発せられる愛情までが、ハラスメントと呼ばれたのでは違うような。

たまたま私は、リーダーを良く知っていて、部下を大切にしている人だという先入観があるから、1段とそう感じてしまうのかもしれません。ある意味偏ったものの考えだとしたら、泣いたメンバーをかばった人と同じかもしれません。
けれども、その言葉がメンバーを傷つけるために発せられたものなのか、メンバーのために発せられたものなのか、くらいは感じ取ってみてほしい。

「鎧」を身にまとっていても、その鎧自体が、武器になってしまわぬように、心まで鎧で守らないように、自分が直したほうが良い点は、直していけるよう、鎧のまとい方は考えていきたいものです。

偏った意見ですが、一つの意見として、考えるきっかけになれば・・・。

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