私はあなたの下で働きたい

あなたは「あなたの下(もと)で働きたい」と言える上司にお会いしたことはありますか。
こんな事を言ってもらえる上司ってどんな人なのでしょうか。

私は、前の職場の社長にも上司にも大変お世話になりました。
社長に至っては、「社長よりも年上のこの人をなぜこんなにもYesマンとして持つことができているのだろうか。」と思いながら、観察をしたので、一段と「凄いな」と思う部分を垣間見て来ました。

そんな社長が、「お前に任せる」と業務や役割を直接理由と共に伝えて下さる度に、身震いがするほど嬉しく、また責任も感じながら、仕事をしていました。
が、「お前に次の社長をやらせたいと思っている」と言われた時に、私は、社長になるという選択肢を持っておらず、「◯◯さん(社長の息子)に譲られるまでの間だけなら、つなぎます。」と一晩考えてから返事をしたことを覚えています。
それが、私としての恩返しであり、下に仕える役割としての私が出来ることであれば・・・と考えた末の事でした。

しかし、その後、私は家庭の事情で、職場を離れる事になり、コーチとして完全に独立をしました。
そんな時に、出会った企業の社長に、自分の後継者として、A君を育てたいのだが、本音を話してくれないから、聞いて欲しいと依頼がありました。

まずは、聴くだけという事で伺ったのですが、そのAさんが素敵な方でした。
「私は、社長の下だからこそこの会社で頑張っている。私が社長になるとかは、考えられません。社長が社長を辞められたら、私もこの会社を辞めます。」
とはっきり仰ったのです。
私は、社長の意向も伝えて欲しいと言われていたので、伝えた上で、「社長があなたに託している技術や考え方、会社そのものを、あなたが受け継いでいくという事をしてみませんか。」と伺ってみましたが、「いいえ、私は社長の下だから働きたいのです。」と更にハッキリした口調で話すと、私を説得するように、社長についていきたいと思ったエピソードや、現在の社長との関係性、成長をするために自ら勉強していること、なども話してくださいました。

たしかに、こんなに深い信頼関係があるのであれば、Aさんに社長を任せたいと思う社長の気持ちも分かりましたし、何よりも「共依存関係」ではなく、切磋琢磨できる関係であることが素晴らしいなと感じさせていただきました。

この社長がされているのは、「これからこんな事にみんなで挑戦してみたいんだ」と目標というよりも夢を語り、そこに「まずは来年の◯◯に参加できるようにしたい」など、解りやすい目標を据え、昼食も一緒に食べ、家庭の心配もしながら仕事が上手く行かない時には指導しながら、決して手を出さず、「任せる」と言った事は、近くでずっと見守りながら、やらせてくれるのだそうです。

そして、1年後の「参加」が目標だった事を達成すると、一緒に喜び、次はもっと良いものを!と、来年に向けての課題を探して、一緒に取り組むという事をしていると、日々の仕事だけでなく、形になるものがあって、凄く仕事が楽しいのだそうです。

それは、リーダーとしてのスキルというよりも、その社長のあり方に「惚れた」という言い方をされていました。

この一連の話しを社長に伝えても良いかを聴く前に、せっかくだから自分で伝えてみませんか。とお話をしました。
すると、凄く短くでしたが、「私は社長の下で働きたいんです。社長の下だから働きたいんです。社長が辞められる時は、私も辞めます。」とおっしゃいました。

社長は、それを聞いて、男泣きされていらっしゃいました。そしてAさんもその様子を見ていて、もらい泣き。
社長は、「お前が退職する年齢になるまでは、俺も元気で現役で居ないといけないわけだな。支えてくれよ。」と。。。
凄いところに同席されていただいた気がして、感じた覚えのある身震いを私も感じました。

このお二人の話に同席しながら、「この人の下で働きたい」と思わせてくれる上司や経営者のあり方というものを考えさせられました。
また、今までも多くの部下が居たであろうAさんの会社の社長も、Aさんが他人であっても後継として育てたいと思う部下力もAさんにはあったのかもしれません。

きっとどういうのが絶対素晴らしいというものはなくて、お互いを知ろう、一緒にやろうとどこまで本気で思えたのか、なのかなと思いました。
知った上で、「この人なら」と思える人はそれぞれ違うわけですから、何とも言えません。

けれども、私自身も、Aさんも共通しているのは、社長と同じ夢のワンシーンを一緒に見させてもらい、一緒に取り組んだと感じる瞬間があったことではないかと思います。一緒に作り上げたからこそ、「共依存」にもならず、お互いが成長し続けられたのかと思います。

だからこそ、今、私自身もコーチとしても「同じワンシーンを見る」という事はこころに刻んで関わっています。それが、Aさんと社長のように上下関係でなかったとしても、一緒に歩んでいる感覚を持てていたら、凄く幸せだと思っています。
まだまだ、浅い信頼関係なのかもしれませんが、「smilecoachさんが居てくれるから、堂々と挑戦してみよう」と思っていただけるように自分自身も磨き続けます。そしてまた「皆さんの一歩後ろで働く」を楽しみ続けます。

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