団結力は一歩間違うと脅威となる

数ヶ月前、ある経営者Aさんより、相談に乗って欲しいと連絡がありました。
急ぎの案件そうだったので、連絡をしてみると、団結力の脅威を感じさせられました。

詳しくは語れないにしても、こうした事が、この15年程の間に、数件伺ったことのある事でしたので、多発とまでは言いませんが、もしかしたら起こりうる事なんだなという事で、許可を数年経って、解らないようにしていただくならとお話できる事になりました。

ざくっとお話すれば、集団離職です。しかも、ベテランの方々が揃って辞めてしまうという事です。

経営者が、「最近みんなの様子がおかしいから来て欲しい。社員が何を考えているのか解らない」と、相談があったのです。
お時間を頂いて、小規模企業でしたので、伺って全員からお話を伺いました。

すると、みんな同じような部分に対して、まるで口を揃えたように同じ表現で、経営者のやり方に抵抗をしていました。
「いつ頃から感じているのですか。」
「何かきっかけがありましたか。」
と伺うと、時期もみんな似通っている。何かおかしい・・・。きっかけは、些細な事なのに、みんな捉え方が同じだなんて・・・。

まずは、報告をする前に、社長に何かその頃に出来事があったのか、最近変えていらっしゃる事はないか、などを伺ってみましたが、スタンスも変わっていないです。

もう一度、幹部のお一人にご足労をいただき、再度確認をしました。
「ずっと働いていらっしゃるのに、なぜその時期だったのでしょうか。これからどうしていきたいですか。社長にお伝えになったことはありますか。」など、いくつか確認をさせていただいたら、少しだけ感じたのは、この方の意見が一番、自分の言葉として伝わってくるということ。つまり、他の人はこの方とお話をしているのではないかと。

「周りに相談したことはありますか。」と聞くと、社長には言えないからと、周りの幹部の人達に相談したとおっしゃいました。
何となく、かなり以前に見かけた企業であった集団離職前に似ているなあと、感じたので、経営者にも私の私見としてリスク管理をお願いしました。

その上で、今からでもできることはないだろうか?と考えて、幹部一人ひとりと改めて面談をされたようでした。

しかし、時既に遅し・・・。

皆さん、交代で休みをとっていらっしゃったのは、面接だったようで、集団離職と言っても、2週間の内に幹部全員が転職をしたということが起こりました。
さすがの社長も全員だとは思っていなかったようで、その後、かなりショックを受けていらっしゃいましたが、その下の人達はいらっしゃるわけですから、仕事は続けるしかありません。
リスク管理の一貫で、社員を募集していたために、ご自身が中心になって指揮をとり、何とか直近の仕事は乗り越えられ、その間に頑張った方々にお礼もおっしゃっていらっしゃいました。

数年経って、その企業様はどうなっているのか。
存続しています。
辞めて行かれた人達もそれぞれの会社で頑張っているんだろう、という想像だけで、話はなかなか入ってこないそうです。が、中心になってしまった方は、社長よりも頼りにされていたのでしょうね。

経営者はおっしゃいました。
「あの時に、残ってくれた人達を大切にするだけです。当時の私は、任せっきりだったのかもしれない。何より感謝を伝えたことはなかったかもしれない。今思うと反省もあるから、同じ過ちを起こさないように、社員との会話には気をつけている。今度、集団離職がある時は、会社をたたむ時だというつもりで関わっている。」と。

確かに、怒ってしまった出来事に執着する時間はなく、先を見ていかないと経営の存続はなかったでしょう。だからといって、流してしまわず、反省して、改める事ができるのは、凄い経営者だなあと私は感じてしまいました。

そう思うと、辞めて行かれた人達は、本当に全員、辞めたかったのでしょうか。
もしかしたら、違う意見の人も居たでしょうし、辞める所まではいいよと思っていたかもしれません。解釈だってそれぞれですから、大した事じゃないけど、大きな渦にのっかってしまっただけかもしれません。
ふと、団結する力というのは、時として、人の心まで支配してしまい、あらぬ方向へと導いてしまうこともあるんじゃないかと、脅威を感じました。

社員さん側の意見は、その時しか聴いていないので、今どうされているのか、私には知る術もありません。
けれども、Aさんの企業もAさんも、今いらっしゃる方々も、辞められた方々も、今、これでよかったと思える選択をし続けていらっしゃることを願うばかりです。

国民的アイドルグループの解散騒動もあり、この事を少し思い出してしまいました。

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