やめちまえ!

仕事をついつい必死にやってしまう私にとって、上司から、しかも経営者から「やめちまえ」と言われた体験は、貴重だったなと今も良く思い出します。

お身内であればまだしも、他人の私に「やめちまえ」と怒鳴っていらした時には正直びっくりしました。けれども、そこまで言わせたのはこの私だったんです。

当時、仕事も覚えてきて、かなり職場全体を任させていると勘違いしてきていた時期だったと思います。何でも自分が考える事が、一番見えている事で、一つの現場に入りきりになっていらした社長には何も見えなくなっていると思っていました。

そこで有る時、どんな内容だったか覚えていませんが、社長の休憩時間に社長室をノックして、入り、その場で何かを報告の上、提案しました。
すると、みるみる顔色が真っ赤に変化したと思ったら、
「社員が戦略に関して口を出すんじゃねえ。お前らは戦術を考えて実行するだけであって、戦略に首を突っ込むな。勘違いするんじゃねえ。気に入らないなら、やめちまえ!」と怒鳴られました。

その時に初めて、戦略と戦術が違うこと。一つの部門の加勢をしながらも、職場全体を見られる仕事をしていたことなどを知りました。
もう首になるんだなと覚悟を決めて言ったわけでもないので、余計にその言葉は、心にぐさっと刺さりました。
私が驕っていたことも気づきました。

結局、売り言葉に買い言葉のように「やめちまえ」と言われたのですが、その後も辞めずに続けましたが、それ以来、戦略と戦術を分けて考えられるようになりました。上司が考える領域と、部下が考える領域が違うんだという事も知りました。

当時の私には、その「やめちまえ」がなかったら、驕ったまま、ズケズケと戦略に関して物を言っていたのかもしれません。社長がとられた戦略を実行するのが私達であるという認識が大きくなったのは、それからでした。

たぶん、その言葉を言われてからの私は、やっと上司を上司として見るようになり、変わった事で、信頼関係をより深める事ができたのだと思います。

たまにお身内の方と話をしていました。「私(お身内)以外で、やめちまえと言われたのは、後にも先にも小林さんだけだろうな」と。
どれだけ対等だと勘違いして仕事をしていたかですよね。そんなこんなを繰り返して、学ばせていただいた事は、私には大きな力となりました。

「やめちまえ」と言われて、初めて上司が私を首に出来る事も気づきました。当然の事なのに、この言葉は今でも私の心にずっと響いています。

部下としてやることと、上司のやることの違い。上司に文句ばかり言っても、上司が考えた末に出した結論だったら、それは部下が形にしていくしかない。部下が上司の戦略に楯突いても仕方ないんですよね。目標もそうして決められたものなら、部下は実行するのみ。それが仮に無理難題であろうと、実行できなかったら、「やめちまえ」なんですよね。

ストレートだから響いた言葉。今でもその言葉のおかげで私は変われたと感じています。そして何より、部下としてやることは徹底してやるようになったのは、それからなんでしょうね。

この昨今、敬遠される言葉だけれど、上司にそこまで言わせてしまった過去をふと振り返り、その後ずっと成長を見守り続けて下さった上司に感謝を伝えたい。ありがとうございます。

人って、どんな時にでも、学べる力を持っているのだろうなあ。

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